サイドバーを表示
英国に輸入された銀製品の「輸入マーク」の歴史

「輸入マーク」とは?

英国の銀製品には「ホールマーク」と呼ばれる小さな刻印が打刻されています。
英国内で製造された銀製品のホールマークについては、こちらのブログ記事で詳しく解説しておりますのでご参照ください。

【ブログ記事】英国銀製品のホールマーク

1867年から1998年の間、英国以外で製造された銀製品が英国内で販売するために輸入された場合、英国内で製造された銀製品と区別するために「輸入マーク」と呼ばれる別のマークが追加されていました。
この記事では「輸入マーク」について詳しく解説いたします。

1.輸入マークの始まり(1842年~1904年頃)

19世紀の英国は世界各地に植民地を広げ、世界史上最大の領土面積をもつ「大英帝国」として君臨し、世界中の富が集まっていた時代です。
産業革命を最初に成功させ「世界の工場」と呼ばれた英国では上質な銀製品がたくさん作られていましたが、フランスやドイツなど英国以外の銀製品も多く輸入されていました。

1842年に制定された英国の「関税法」では、英国外から輸入された金銀製品は英国試金鑑定所で鑑定されない限り、英国内で販売できないと定められています。
さらに1867年には、英国のホールマークに「F」のマークが追加されるようになり、この刻印は1904年頃まで使用されていました。

 

しかし、当時の英国民の中には輸入銀製品は英国製のものより劣っているとする意識が高く、輸入業者達はこのマークを打刻されることをいやがり法の抜け道をついて打刻を免れたものが多くありました。
試金鑑定所にその品物が外国製かどうかを問う権限がなかったのが原因だったようです。


2.法律の改正と輸入マークの変更(1904年~1998年)

1904年の法律の改正で、輸入マークはそれまでの「F」のマークが追加される形式から、英国各地の試金鑑定所独自のマーク(アセイ・オフィスマーク)が輸入品用のマークに置き換えられる形式に変更されました。

また、英国製の銀製品には銀の品位を示す「スタンダードマーク」としてライオンパサント(左向きのライオン)のマークが刻印されていますが、輸入銀製品には楕円の中に「.925」などの数値のマークが刻印されるようになります。

英国銀製品の輸入マーク(1904-1998)

 

3.刻印の国際共通化(1972年~)

1972年には「国際刻印条約」と呼ばれる製品の国境を超えた取引に関する国際条約が調印され、英国もこれに参加しました。
銀だけでなく金、プラチナ、パラジウムも対象です。

この条約で制定された共通管理マーク(CCM : Common Control Mark)は各国の鑑定所(検査所)のホールマークと同じ法的地位を持つことになります。
CCMは決められた試験方法に従って合金の純度が検査された後、各国の鑑定所で刻印されます。

この流れの中で1998年には英国の刻印法が改正され「輸入マーク」の使用は廃止されました。
1998年以降は英国製と輸入品の両方に同じ刻印が打刻されるようになっています。


まとめ

英国の銀製品には、フランスやドイツ、オランダ、デンマークなど他の国で作られ輸入されたものもたくさんあります。
英国市場向けにデザインされているものもありますが、英国製のものとは雰囲気や細かなデザインが異なるものも多く、その違いをみるのもひとつの楽しみです。
雰囲気の違う英国の銀製品を見つけたら「輸入マーク」がないか探してみてください。



タグ:

シェア:

コメントを書く

コメントは公開前に承認される必要があることにご注意ください。